自分たちの周りにはポイントが溢れています。Tポイント、ポンタポイント、amazonポイント等、名前にポイントとつくものから、マイレージや近所のパン屋さんでのスタンプカードまで非常に多岐に渡ります。
今回はそんなポイント制度の会計処理についてわかりやすく解説をします。
ポイントの交換方法における3パターン
ポイントはそのポイントの交換方法により3パターンに分けられます。
① 付与したポイントが当社でのみ使用できる場合
② 付与したポイントが他社でのみ使用できる場合
③ 付与したポイントが当社と他社で使用できる場合
今回はこの内、①について解説をします。
本記事は以下の記事で解説をした、収益認識の5つのステップを理解していることが前提となります
ポイント制度における5つのステップ
具体例
〔前提〕
- 当社はポイント制度を導入している。
- ポイントの付与率は現金販売金額の1%であり、1ポイントは1円として当社の商品購入に利用できる。なお、未使用のポイントは2年後に失効する。
- 過去のポイント利用データから、付与したポイントの80%が使用され、20%は未使用のまま失効すると予測している。
- ポイントは顧客にとって重要な権利である。
〔問題〕
A商品600,000円を現金で販売し、6,000ptを付与した。
では、A商品販売時に計上される収益はいくら?
〔解答〕
A商品販売時の収益:595,238円
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この結論を5ステップに当てはめて考えていきましょう。
今回の事例では、ステップ2、ステップ4、ステップ5が特に重要じゃぞ
ステップ1:契約の識別
収益認識ステップ1は契約の識別です。
今回の契約は、600,000円のA商品の販売と6,000ptの付与です。契約にポイントの付与が含まれているのがPointです。
ステップ2:履行義務の識別
収益認識ステップ2は履行義務の識別です。
今回の具体例では下記の2つが該当します。
- A商品の引き渡し
- ポイントと交換に、商品の引き渡し
今回は、単にA商品を引き渡しただけではなく、ポイントも付与しているため、ポイントに関する履行義務も識別しなくてはいけません。
ポイントの付与は「そのポイントと引き換えに商品を交換する義務」と捉えるんだね
ステップ3:金額の算定
収益認識ステップ3では取引価格を算定します。
今回の具体例では対価の額である600,000円になります。
ステップ4:金額の配分
収益認識ステップ4では取引価格600,000円を独立販売価格の比率に基づき各履行義務(A商品とポイント)に配分します。
A商品の独立販売価格は600,000円で、ポイントは・・・ん、ポイントの独立販売価格って・・・?
付与したポイントの独立販売価格の算定
ポイント自体は独立して販売していないので、ポイントの独立販売価格を直接観察はできません。このような場合は独立販売価格を見積もることになります。
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今回は1pt=1円という扱いなので、付与した6,000ポイントの価格は6,000円となります。
ただし、見積もる際は「そのオプション(今回はポイント)が行使される可能性」を考慮する必要があります。
当社は80%使用されると予測していました。よって、
6,000円×80%=4,800円となるので、付与したポイントの独立販売価格は4,800円となります。
6,000pt付与したけど4,800ptしか使用されないなら、実質的には4,800円分しか商品を渡す義務がないと考えるということじゃな。変動対価と同じ発想じゃ
ポイントの独立販売価格がわかれば、金額の配分ができるね
履行義務への配分
独立販売価格はA商品が600,000円、ポイントが4,800円なので、取引価格600,000円は
A商品→595,238円
ポイント→4,762円
と配分します。
※商品:600,000×600,000/604,800=595,238
※ポイント:600,000×4,800/604,800=4,762
ステップ5:履行義務の充足
収益認識のステップ5では、履行義務が充足されたタイミングで収益を認識します。
A商品の販売は、販売時点で履行義務を充足するため、販売時に収益595,238円を認識します。
対して、ポイントは顧客がポイントを利用したタイミングで履行義務を充足することになるため、A商品の販売時においては収益は認識しません。
その結果、販売時に収益を、
A商品595,238円→認識する
ポイント4,762円→認識しない
という結論になります。
解答を導けた!
A商品の販売で600,000円受け取っているが、販売時に収益認識されるのはA商品に配分された595,238円だけになる、ということじゃな
ポイントの会計処理(仕訳)
基本的な考え方を理解したら、いまの具体例を前提に実際の取引と仕訳をみていきましょう。
1.当期の取引と仕訳
期首にA商品600,000円を現金で販売し、6,000ptを付与した。
金額の算定方法はさきほどの5ステップで説明したとおりです。収益として認識しない部分は、商品を渡す義務として負債に計上します。
2.翌期の取引と仕訳
顧客は上記のポイントのうち4,000ptを利用し、当社は4,000円のB商品を渡した。
使用された分に係る金額を負債から収益に振り替えます。使用された分に係る金額は割合(使用されたポイントと、使用されると予想されるポイントの割合)で計算します。
4,762円×4,000pt/4,800pt=3,968円
3.翌々期の取引と仕訳
残りの2,000ptは使用されなかったため失効した。
失効した場合も収益として認識します。ポイントが失効することで当社の履行義務がなくなるため、契約負債の残額794円全額を取り崩します。
1から3の売上高を合計してみるんじゃ
595,238たす3,968たす794=っと・・・あ!600,000になった!
結局、600,000を顧客から受け取っておる。なので収益は600,000になるのじゃ。ただその認識時期がちょいと複雑になってるということなんじゃ
まとめ
ポイント制度の場合には
- 使用される可能性を考慮しポイントの独立販売価格を見積もる。
- 販売時に、独立販売価格の比率に基づき、商品部分とポイント部分に取引価格を配分する。
- ポイントは、使用されたときまたは失効時に収益を認識する。
- 最終的には顧客から受け取った金額が収益の合計になる。
という点をおさえておきましょう!
ポイント引当金について
従来(収益認識基準の適用前)あったポイント引当金を計上するという実務は、今回の処理に置き換わることになります。
コメント
コメント一覧 (4件)
初のコメント失礼します。
日商簿記一級の161回商業簿記でカスタマーロイヤリティポイントの問題では、100,000の売り上げに対して10%のポイントの仕訳において
売上10,000 契約負債10,000
という仕訳をしていたのですが、
本来は100,000を100,000の商品売上と10,000のポイントの個別の履行義務があるので
90,909と9,091にわけるので、
売上9,091 契約負債9,091
になると思うのですが、どうなのでしょうか?
いつも分かりやすい解説ありがとうございます。
1つ、ご質問させてください。
本例で、付与したポイント(6,000pt)のうち5,000ptが使われた場合は、どのような仕訳になるのでしょうか。つまり、想定してた80%使用されるという予測を超えて実際に使われてしまった場合です。
収益計上額は、4,762円×5,000pt/4,800pt≒5,953円となり、契約負債5,953/売上高5,953 となるのでしょうか。
すると、契約負債は借方残となりますがこれは問題ないのでしょうか?それとも、そもそも5,953を収益とすることは出来ないのでしょうか?
その場合、契約負債4,762を収益計上します。
(5,953とすると、収益合計が600,000を超過してしまうので、妥当じゃありません)
ありがとうございます!大変良くわかりました。