消化仕入というのは、主に百貨店や大型ショッピングセンターなどでみられる取引形態です。
今回は新収益認識の会計基準に関連して、その「消化仕入」の会計処理・仕訳について解説をしていきます!
消化仕入とは
消化仕入とは、商品が販売されたタイミングで、その商品を仕入れたとする取引形態です。
これだけだと意味がわからないと思うので、具体例で確認していきましょう。
消化仕入取引の具体例
登場人物
- A社(メーカーまたは卸売業者)
- 当社(百貨店)→今回の主役
- 顧客
取引
- A社の商品を当社の店舗(テナントスペース)で販売する
今回は百貨店である当社が主役です。
では、取引の流れを確認していきます。
① A社が当社店舗に商品を陳列する
まずA社が、当社の店舗に商品を陳列します。
商品は当社にありますが、当社がこの商品を購入したわけではありません。
- 商品の所有権
- 商品の在庫リスク(売れ残った場合、誰が損するか)
- 販売価格の決定権
これらはすべてA社にあります。
これを一言でいうならば
A社が商品を支配している
となります。
逆に当社目線で言えば、
当社は、A社に対して、販売する場所や機会を提供しているだけ
となります。
- 当社は商品を販売場所を提供しているのみで、商品を仕入れたわけではない
- 当社は商品を支配していない
② 顧客が当社店舗で商品を購入する
続いて、顧客が当社の店舗に来店し商品を購入します。
この時、消化仕入の場合は以下の2つが同時に起きたと考えます。
・当社はA社から商品を仕入れた
・当社は顧客へ商品を販売した
つまり「商品仕入れてすぐ売った」と擬制するのです。
消化仕入では「仕入」と「購入」が同時に起きる
このように商品が売れた時点(消化した時点)で仕入れるのが「消化仕入」です。
消化仕入は別名として「売上仕入」とも言うんじゃ
消化仕入のメリットはなんなの?
消化仕入取引の特徴(メリット・デメリット)
販売されるまでは商品の所有権及び保管責任は当社(百貨店側)にないため、
在庫リスクを負担せずに済む
という点が当社にとっての一番のメリットです。
また、他にも下記の特徴があります。(これらは「当社が在庫リスクを負わない」という点から派生する特徴です)
消化仕入のメリット・デメリット
メリット
- 多種多様な商品を扱うことが可能となる
デメリット
- 当社(百貨店側)の利益率は、通常の「買取仕入」形態よりも低くなる
- 商品の販売価格の決定権は仕入先(卸売業またはメーカー)にある
収益認識基準と消化仕入
消化仕入は代理人としての取引
新収益認識基準により消化仕入で論点となるのは、
「本人と代理人の区分」
です。
具体的には、当社(百貨店側)は、商品の販売を本人として行っているか、代理人として行っているかという点です。
この点、消化仕入は通常、
代理人に該当する
と考えられます。
代理人であるかどうかの判定指標
・企業が財またはサービスの提供に対して主たる責任を有しているか
・企業が財またはサービスに係る在庫リスクを有しているか
・企業が財またはサービスの価格の設定において裁量権を有しているか
消化仕入は「代理人」に該当する
消化仕入の仕訳例
最後に仕訳例を確認しましょう。
仕訳例
当社は消化仕入契約の対象の商品を1,000円で顧客に販売した。同時に消化仕入契約に基づき買掛金800円を計上した。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
現金 | 1,000 | 買掛金 | 800 |
手数料収入 | 200 |
このように消化仕入は代理人の会計処理に従って、収益は純額で認識することになります。
消化仕入の収益は、純額で認識する
最後に
デパートのマルイを運営する丸井グループの決算短信をご紹介します。
消化仕入取引について、従来、「売上高」及び「売上原価」を総額表示しておりましたが(中略)純額表示へ変更しております。(中略)遡及適用前と比較して、前連結会計年度の「売上収益」及び「売上原価」はそれぞれ155,100百万円減少しておりますが、「売上総利益」、「営業利益」、「経常利益」及び「税金等調整前当期純利益」に与える影響はありません。
丸井グループ|平成28年3月期決算短信
総額表示から純額表示へ変更した結果、売上高が大きく減少しています。
(また本記事で引用はしませんでしたが、科目も「売上高」から「売上収益」に変更しています。)
従来は消化仕入れに関する会計処理の定めはなかったため、丸井グループのように総額表示を行っている実務上の例が多くあるそうです。
しかし新収益認識の基準により、消化仕入は基本的に「純額で収益認識」となりました。
純額表示に変更する場合には、丸井グループのように売上高に大きな影響を与えますので注意が必要です。
なお、総額表示を純額表示にしても、利益の額に影響がないのでその点もおさえておきましょう。
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もし「本人・代理人の区分」という論点が弱い方は下記の記事を参考にして下さい!
コメント
コメント一覧 (6件)
ご質問
消化仕入方式になると収益は純額認識だとすると
メーカー側の私の確定申告の場合1000円売上で手数料200円支払い800円利益と記さなけるばならないのか、仕入れとして販売になるので800円で売ったとして800円売上利益とだけ記するのかがわかりません。
ご指導よろしくお願いします
牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法によると、この例にある当社は販売業者にあたるのですが、商流上、特定牛肉の売買に関わりがある以上、牛トレサ法に基づく帳簿の備付けは必要になりますか?
申し訳ありません。
わかりかねます。。。
とてもわかりやすいです!
質問ですが、こちらメーカー側の処理は特に何も変わらないですよね。
委託販売契約は、「顧客に販売した時点で収益を認識する」という考え方は変わってない(はず)ですが、委託販売であるかの判断基準(指標)が収益認識基準では示されております。
(適用指針76項)
仕入形態(買取仕入・委託仕入・消化仕入)の内、消化仕入だけでなく委託仕入も、販売者ではなくメーカーが支配しているので、同様に販売者は代理人に当たり、手数料収入を純額表示すると思ったのですが、間違い無いでしょうか。
>従来は消化仕入れに関する会計処理の定めはなかったため、丸井グループのように総額表示を行っている実務上の例が多くあるそうです。
委託仕入について特段の記載がないのは従来の実務処理と収益認識基準で変化がないのが理由でしょうか。