- 繰延資産とはなんですか?
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本来は費用なんだけど、将来の収益と対応させるためにB/Sに繰り延べられたもの
例えば、増資をする場合を考えます。
増資をするには、諸費用がかかります。
典型例は、証券会社へ支払う手数料です。
仮に手数料を100円払ったとしましょう。
では、この支払った手数料100円はどのように会計処理すべきでしょうか?
もっと言えば、仕訳の借方は費用と資産、どちらになるべきでしょうか?
手数料は単なる経費なんだから、費用処理でしょ。
はい、そうですね。
支払った手数料は、当然費用になるはずです。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
費用 | 100 | 現金 | 100 |
逆に言えば、資産計上はしないはずです。
払った手数料に財産的な価値はないので、資産計上はおかしいと直感的にイメージできると思います。
確かに。ATMで1万円下ろして、手数料100円払ったとして、「自分は、現金1万円と手数料100円を合わせた1万100円を資産としてもっている」なんていうのは変だよね。
しかし、この払った手数料を資産計上しようというのが繰延資産です。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
資産(→繰延資産) | 100 | 現金 | 100 |
なんで資産になるの?
キーワードは費用収益対応の原則です。
以下のロジックを見てください。
- 手数料を払ったのは、増資をするため
↓ - 増資をしたのは、お金を集めるため
↓ - お金を集めるのは、事業を拡大するため
↓ - 事業を拡大するのは、収益を獲得するため
つまり、「増資の手数料は、将来の収益獲得のために支払った」と捉えることができます。
これは、
「増資の手数料は、将来の収益獲得に貢献している!」
ということなので、費用収益対応の原則の考え方を持ち出し、
「増資の手数料は支払時の費用ではなく、将来の費用にすべき」
となるのです。
そして、将来の費用にするためには、
- 支払時にいったん費用にせず資産とする
- その後、減価償却する
とすればよいです。
このロジックにより、「本来は費用なんだけど、資産計上される項目」が生じることになり、これを繰延資産といいます。
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通常、資産には財産的価値があります。
しかし、繰延資産には財産的な価値がありません。
(その正体は、費用です。)
そのため、繰延資産はすごく特殊な資産と言えます。
また、どんな費用でも繰延資産にできてしまうと、会社の都合で費用の額をコントロールできてしまいます。
そのような弊害を避けるため、繰延資産計上できる項目は下記の5つに限定されています。
- 株式交付費
- 社債発行費等
- 創立費
- 開業費
- 開発費
ちなみに、上記5項目も、原則的な処理は費用処理で、繰延資産処理は容認規定となっています。
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