ヤバい会計学とは
ヤバい会計学は、 日商簿記検定受験生向けの会計学。
簿記の学習をするうえで、知っておくべき会計理論をかみ砕いてわかりやすく解説します。
ボブといっしょに勉強しましょう!


今回学ぶこと
今回は実現主義について学んでいきます!

前回のヤバい会計学で発生主義会計を学習しました。
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今回学習する実現主義は、発生主義会計の続きの内容となっています。
具体的には、収益を"いつ"認識するかというお話です。

今回のヤバい会計学で実現主義の考え方をおさえましょう!
実現主義って?

実は、前回の講義ですべてを説明できたわけではないのです。
発生主義会計における収益・費用の認識時点は次のようになっています。


そうなんです。
発生主義会計は、
- 収益は実現時点で認識
- 費用は発生時点で認識
する方法です。
発生主義会計だからといって、収益も発生時点で認識するわけではないのです。

一言でいうと、商品を販売した時点です。
販売した時が収益の認識時点なので「販売基準」ともいいます。

ただ、1つ知っておく必要のあることがあります。
それは実現の2要件です。
実現の2要件
実現時点=販売したとき
と言いましたが、では、販売時点はいつなのでしょうか?
それは次の2要件を満たしたときとされています。
- 商品を相手に渡した(またはサービスを提供した)
- 現金や売掛金などを受け取った
「実現の2要件を満たした=販売できた」となっています。

そうですね。
実現の2要件と聞くと、難しく感じますが、2要件の中身自体は特に難しいものではありません。

実現主義じゃないとヤバい
発生時点で収益を認識するとヤバいことが起きるからです。

社長:中学生くらいの頃、日光に修学旅行行って、お土産で木刀買ったりしたよなあ
部長:わたくしも買った覚えありますよ。こっちでは売ってないので、ついつい買っちゃうんですよね。
社長:みんな同じだな笑…ん!名案を思いついたぞ!
部長:どうされました?
社長:日光のお土産屋さんから木刀を仕入れて、こっちで売るんじゃ!日光でしか買えないモノをこっちで売れば大儲けじゃ!
部長:なるほど、それは名案ですね。仕入値は1本500円ですが、売値はどうしましょうか?
社長:「日光に行かないと買えないモノがこっちで買える」そこに当社の木刀の価値があるから、多少高くても買ってくれるじゃろ。強気の5000円でいこう!
部長:かしこまりました!ではすぐに日光へ行って木刀を調達してきます!
社長:まずは1000本買ってくるんじゃ!
(数日後)
部長:1000本買ってきました!
社長:よくやった!完売すれば5百万円の売上じゃな。フフフッ
部長:1000本もの木刀を持って帰ってくるのが大変でしたよ。新幹線ではみんなから白い目で見られました…
社長:ご苦労だった。だが、そこに当社の木刀の価値があるんじゃ・・・まてよ・・・
部長:どうしました?
社長:こういうことが言えるんじゃあないか?(書き書き...)

部長:なるほど。確かに売上500万円の源泉は「日光からこっちに運ぶ」という点にありますね…ということは…
社長:こっちに運んでくるだけで、付加価値が上がってる!つまり、もうすでに収益は発生してるんじゃ!!さっそく売上の計上じゃ!!
部長:なるほど!大変さを考慮すると、全体の9割は発生してるといえそうですね。売上を450万円計上しておきます!!
(数日後)
部長:社長…木刀が全く売れません…ッ!このままじゃ1円も回収できなさそうです
社長:何を言っておる、大丈夫じゃ。なんせ、もう売上を450万円も計上したからの!!ワハハ!

売上を発生時点で認識すると、売れる前に収益を計上することになります。
今回は、売れる前に450万円もの収益を計上しちゃっています。
しかし蓋を開けてみたら全く売れず、本来の売上はゼロでした。
このように、発生時点で収益を認識してしまうと、テキトーな収益計上になってしまうのです。
テキトーな収益を計上しないために、、、

そのとおりです。
販売した時に収益を認識することで、テキトーではない、ちゃんとした収益を計上できるのです。
(上記の例では、もし木刀を売ることができれば500万円の収益計上できますが、難しそうですね。)
実現主義の使い方①
実現主義を知ると、前受金と売掛金の仕訳を自信もって行うことができるようになります。
- 当社はA社から商品100円の注文を受け、手付金として現金100円を受け取った。
- 当社はB社から商品200円の注文を受けたので、B社へ商品を引き渡し、代金は掛けとした。
当期の売上はいくら?

残念!外れ!
答えは200円です。
これは実現の2要件に当てはめてみればわかります。

- 商品を渡していない→①の要件は×
- 現金を受け取った→②の要件は○
よって、2要件を満たしていないので収益認識しない。

ちなみに仕訳はこうなります。
借 方 | 金額 | 貸 方 | 金額 |
---|---|---|---|
現金 | 100 | 前受金 | 100 |
- 商品を渡した→①の要件は○
- 掛けで売った→②の要件は○
よって、2要件を満たすので収益認識する。

受け取る対価は現金に限りません。
売掛金といった債権でも②の要件を満たします。
そのため、掛け売上は収益計上します。
借 方 | 金額 | 貸 方 | 金額 |
---|---|---|---|
売掛金 | 200 | 売 上 | 200 |

実現主義の使い方②
こっからは少し応用です。
(日商簿記検定2級の内容です)
実現主義を知ると、次の2点の理解も深まります。
- 出荷基準、引渡基準、検収基準
- 未実現利益
応用①:出荷基準、引渡基準、検収基準
商品の販売は、
- 商品を出荷する
- 相手に引き渡す(相手の手元に到着する)
- 相手が中身を確認する(検収する)
という過程を経て成立します。
では、販売時点はいつと考えるべきでしょうか?
それは、なるべく遅い方、つまり検収時が望ましいとされています。
販売基準は、収益認識をテキトーにさせないための方法です。
ここでいうテキトーというのは、販売が成立しないかもしれないのに収益を認識しちゃうということです。
例えば、遠隔地に商品を発送する場合は、運送事故や到着前にキャンセルされるといったリスクがあるので、出荷時点で収益認識は危ないと言えます。
応用②:未実現利益
実現していないのに収益を認識してしまうことがあります。
この事態が起きるのは、本支店会計と連結会計です。
本店が支店に商品を売った(送付した)場合
親会社が子会社に商品を売った場合
どちらにおいても、会社または企業集団全体からみれば未実現なので、そこから生じた利益は消去することになります。
最後にボブから一言


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