ヤバい会計学は、 日商簿記検定受験生向けの会計学。
簿記の学習をするうえで、知っておくべき会計理論をかみ砕いてわかりやすく解説します。
ボブといっしょに勉強しましょう!


今回学ぶこと
今回は発生主義会計について学んでいきます!

発生主義会計は、「会計の中心となる考え方」と言えるくらい重要です。
その分、発生主義会計を知らないまま簿記を勉強すると…

そうです。
発生主義会計を知らずに簿記を勉強することは、野球のルールをよく知らないまま野球の練習をするのと同じです。

今回のヤバい会計学で発生主義会計の考え方をおさえましょう!
発生主義会計って?

そもそも何の論点かというと、収益と費用を"いつ"認識するか?という論点です。
例えば、当期に商品を売った場合、
収益(売上)を、「当期」の損益計算書に計上する?それとも、「翌期」に計上する?
ということを決めるルールが発生主義です。

そうですね。
では、もし「掛け売上(代金後払いの販売)」だったらどうでしょうか?
- 当期→掛けで売った(現金増えてない)
- 翌期→その代金を回収した(現金増えた)
この場合、当期に現金増えていませんが、それでも当期に収益を計上すべきなのでしょうか?

この点、発生主義会計では次のように考えます。
発生主義会計における収益は、価値が増えたら認識します。
現金の収入時点ではありません。
さっきの掛け売上の場合を考えてみましょう。
近々、現金が増えること確実
価値が増えたといえる。
当期に収益を計上する!
というロジックとなり、売った時点、つまり当期が収益の認識時点となるのです。

念のため、具体例で損益計算書を確認しましょう。
具体例発生主義の損益計算書
- 掛け仕入200(当期の支出ゼロ)
- 掛け売上300(当期の収入ゼロ)
収益 | 300 |
---|---|
費用 | 200 |
利益 | 100 |
このように、現金収支が一切なかったとしても、発生主義会計では100儲かったことにします。

成果が生じた時点が価値の増加、モノやサービスを消費した時点が価値の減少時点と考えます。
- 収益(価値の増加)→成果が生じた時点
- 費用(価値の減少)→消費した時点
実際には、取引(勘定科目)によって価値の増減時点はかわります。
もう少し読んでいくとよりわかるでしょう。

発生主義会計じゃないとヤバい
もし、発生主義会計じゃなければヤバいことがおきます。

社長:当期の業績について報告を頼む
部長:はい!当期は、200円で仕入れた商品を300円で販売しました!
社長:では利益は100円ということじゃな
部長:それが…仕入代金はすでに支払ったんですが、売上代金は翌期に入金されることになってます…
社長:なんじゃと…じゃあ、当期のPLはどうなるんじゃ!?
部長:収益はゼロで、費用は200なので、赤字200になります…
社長:アカーン

収益・費用を現金収支の時点で認識する考え方を「現金主義」といいます。
発生主義会計じゃなければ、現金主義会計になります。
上記の例では、現金主義で利益を計算した結果、商品を売っているにも関わらず、収益はゼロで大赤字になっています。
収益 | ゼロ |
---|---|
費用 | 200 |
利益 | −200 |
このように、現金主義会計の場合、取引の実態と利益が噛み合いません。
つまり、現金主義会計では適切な損益計算書を作成することはできないのです。
そこで、発生主義です。
収益 | 300 |
---|---|
費用 | 200 |
利益 | 100 |
発生主義では現金の増減に関係なく収益・費用を認識する結果、実態にあった利益を計算することができるのです。
これが、発生主義会計が採用されている理由です。





発生主義会計の使い方
発生主義会計を知ると、決算整理仕訳の理解を深めることができます。
なぜなら決算整理仕訳の多くが現金主義会計を発生主義会計に変換するための仕訳ということがわかるからです。

例1 売上原価の算定(期末在庫の計上)
借 方 | 金額 | 貸 方 | 金額 |
---|---|---|---|
繰越商品 | ×× | 仕入 | ×× |
発生主義会計において、費用は消費した時点で計上です。
では、商品の仕入取引において消費した時点はいつでしょうか?

わかった!仕入れた商品を相手に渡したときだ!
つまり売れたときだ!!
そのとおり!
仕入れた商品は売れた時点が消費時点、つまり費用の認識時点です。
しかし、期中仕訳を思い出してみましょう。
商品を仕入れた時点で、費用計上(勘定科目は仕入)していますよね。
期中では費用の認識時点が消費時点とはなっていないのです。
そこで、消費した分だけを費用にするための修正が上記の決算整理仕訳です。
具体的には、「期末在庫=未消費額」なので、期末在庫の金額だけ費用を取り消すのです。
例2 減価償却費の計上
借 方 | 金額 | 貸 方 | 金額 |
---|---|---|---|
減価償却費 | ×× | 建物 | ×× |
固定資産は時が経過していく過程で徐々に価値が減少していきます。
つまり、時の経過時点が費用の認識時点です。
しかし、期中仕訳において、固定資産は資産に計上するのみで、費用計上していません。
そこで、時が経過した分だけ費用計上するために、決算で減価償却費の計上を行うのです。
例3 費用の見越し・繰延(未払費用・前払費用)
借 方 | 金額 | 貸 方 | 金額 |
---|---|---|---|
支払家賃 | ×× | 未払家賃 | ×× |
借 方 | 金額 | 貸 方 | 金額 |
---|---|---|---|
前払家賃 | ×× | 支払家賃 | ×× |
例えば、建物のワンフロアを借りたとしましょう。
この場合、費用(勘定科目は、支払家賃)が生じます。
家賃は賃借期間の分だけ支払う必要があるので、こちらも時の経過(賃借期間)により費用を認識します。
しかし、
- 家賃が後払いの場合→賃借したけど期中で費用計上していない
- 家賃が前払いの場合→賃借してない期間も費用計上している
ことが生じます。
そこで、決算において、
- 後払いなら→費用計上(相手勘定は「未払費用」)
- 前払いなら→費用の取り消し(相手勘定は「前払費用」)
とするのです。
このように、発生主義会計を知ると、

ということが理解できるようになるのです。
最後にボブから一言


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