こんにちは!
償却原価法には定額法と利息法の2つがありますが、このうち理解が難しいのは利息法です。
うん、よくわからないからやり方覚えちゃった。
理解がない状態で覚えようとするのは大変です。
そこで今回は、利息法について解説します!
利息法の会計処理の確認
先に結論から確認するので、具体例を用いて利息法の会計処理を示します。
- 額面10,000円のA社社債を9,300円で取得(満期保有目的)
- 償還期間:3年
- クーポン利率:年3%(年1回払い)
- 実効利子率:年5.6%
社債購入時
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
A社社債 | 9,300 | 現金 | 9,300 |
第1回目利払日(購入から1年後)
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
現金 | 300 | 有価証券利息 | 521 |
A社社債 | 221 |
※1 有価証券利息:9,300×5.6%=521
※2 現金:10,000×3%=300
※3 A社社債:521-300=221
第2回目利払日(購入から2年後)
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
現金 | 300 | 有価証券利息 | 533 |
A社社債 | 233 |
※1 有価証券利息:(9,300+221)×5.6%=533
※2 現金:10,000×3%=300
※3 A社社債:533-300=233
第3回目利払日(購入から3年後)
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
現金 | 300 | 有価証券利息 | 546 |
A社社債 | 246 |
※1 有価証券利息:(9,300+221+233)×5.6%=546
※2 現金:10,000×3%=300
※3 A社社債:546-300=246
このように、利息法は利払日ごとに償却原価法を適用するのが特徴です。
A社社債の金額を集計すると、ちゃんと3年後に額面金額の10,000円になってるね。
これ以降の説明は、この具体例の数値をベースにいくぞ
利息法を理解するための3つのポイント
やり方を覚えてさえしまえば、利息法の仕訳自体はできるようになります。
しかし、理解がなければ覚えるのに苦労します。
利息法を理解するためのポイントは下記の3つです。
- 社債の購入はそもそもどういう取引なのか?
- 社債取引における利息は結局いくらなのか?
- 実効利子率とはそもそも何なのか?
1.社債の購入は実質的にどういう取引なのか?
表面的には、「社債の購入=有価証券の取得」です。
しかし、社債の特徴は、満期日に償還されるという点です。
この点から言えば、実質的には「社債の購入=資金の貸し付け」と言えます。
すなわち、上記の具体例は、「社債の発行会社に対して9,300円お金を貸した」と言えるのです。
2.社債取引における利息は結局いくらなのか?
利息は、お金のレンタル料ですが、上記の取引における利息は結局いくらでしょうか?
取引を全体的に見てみると、次のようになります。
- 最初に9,300円お金を貸した。
- その結果、3年間で10,900円※受け取った。
※額面10,000円+クーポン300円×3回
「9,300円貸したら10,900円戻ってきた」ので、お金を貸したら1,600円増えて戻ってきたことがわかります。
つまり、お金のレンタル料は1,600円だったと言えます。
この1,600円が、今回の社債取引における利息の総額です。
そして、この1,600円は次の2つから構成されてます。
- 利払日ごとに受け取るクーポン利息900円(300円×3回)
- 取得金額と額面金額の差額700円(※以下、「差額」と表現する)
つまり、社債取引においては、クーポン利息900円だけでなく、差額700円も利息と言えるのです。
どっちも利息なのか…じゃあ逆に、クーポンと差額の違いは何なの?
受け取るタイミングの違いじゃ。クーポンは利払日毎に受け取るが、差額は満期日に一括で受け取る点が、両者の大きな違いじゃ。
そうか。逆に言えば、差額700円は、利払日には受け取らないってことだね。
3.実効利子率とはそもそも何なのか
実効利子率とは、クーポンと差額の両方を考慮した利率のことです。
社債取引ではクーポンも差額もどちらも同じ利息なので、その「クーポンと差額を合わせた利率」があるはずです。
その利率が実効利子率です。
クーポン利率がクーポン利息だけを算定するための利率で、実効利子率はクーポンと差額を合わせた利息総額を算定するための利率ってことか
上記の取引では、「9,300円貸したら、3年間で1,600円の利息がついた」という結論となりましたが、これは、「9,300円を利率年5.6%で貸し付けたら、3年間で1,600円の利息になる」という意味になります。
利息法では、この実効利子率をもとに会計処理を行います。
つまり、利息法はクーポンと差額を区別せず、両者をまとめて利息を算定する方法なのです。
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以上、この3点を頭の中に入れたうえで、改めて利息法の会計処理を見ていこうと思います。
利息法を理解する!
- 額面10,000円のA社社債を9,300円で取得(満期保有目的)
- 償還期間:3年
- クーポン利率:年3%(年1回払い)
- 実効利子率:年5.6%
利息法では、クーポンと差額を区別せずにまとめて利息を算定します。
よって、利息法においてはこの取引を下記のように捉えます。
- 9,300円お金を貸した。
- 利率は年5.6%。
- 利払日には300円だけ受け取る。
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では、1年後の最初の利払日を考えてみましょう。
最初の1年間の利息は次のように算定されます。
9,300円×5.6%=521円
「9,300円を年5.6%」で貸したって考えて計算するんだね
10,000円ではなく9,300円を、3%ではなく5.6%を使うのがポイントじゃ
このように1年目の利息は521円と算定されます。
521円はクーポンと差額の両方を勘案した金額なので、このうち300円はクーポン分、221円は差額分に相当しているということがわかります。
そして、521円のうち利払日に受け取るのはクーポンの300円だけです。
221円はすぐに受け取りません。3年後に受け取ることになります。
ここで、「利息221円を受け取らなかった」とは何を意味するかを考えてみると…
521円のうち、221円は当社は受け取らなかった。
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ということは、221円はA社がもっている。
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この221円は、3年後にもらうことになっている。
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ということは、221円はA社に貸したのと実質同じであると言える。
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最初に9,300円貸していたので、221円を考慮すると、1年後に貸している金額は9,521円になったと言える。
そして、これを仕訳にすると…
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
現金 | 300 | 有価証券利息 | 521 |
A社社債 | 221 |
このようになります。
どうでしょうか?この仕訳の意味がわかってきたのではないでしょうか?
ここまで理解できていれば、仕訳をきちんと2面的に捉えることができるようになっているはずです。
- 貸方:有価証券利息が、その期間の「利息の総額」を表している
- 借方:利息総額のうち「すぐに現金としてもらった金額」と「すぐにもらわずに貸しつけた金額」を表している
なるほど…
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そして、これを2年目以降も繰り返します。
3年後にちゃんと10,000円になってる…
実効利子率は「満期日に額面金額になるには何%だろう?」と逆算して算定されるんじゃ。んじゃから、実効利子率を用いて償却原価法を適用すれば、満期日に額面金額になるようになっているんじゃ。
最後に
本記事は以上です。
上記の図をもう一度見てみると、利息の金額が、521→533→546とだんだん増加していることがわかります。
このようになるのは、「受け取らなかった利息=新たに貸し付けた」となるため、だんだんと貸付額が増えるからです。
ひと言で言えば、利息に利息がついていると言えますが、これを複利計算といいます。
利息法は、複利の効果を表現する会計処理と言えます。
この記事を読んで、「利息法って意味不明…」という感想が、「利息法は複利の効果を表現するための会計処理だ!」となれば幸いです。
コメント
コメント一覧 (3件)
分かりやすすぎました。助かりました。ありがとうございます。
プレミアム発行の場合の仕分けも教えて頂きたいです。
いろんなサイト見たけど一番わかりやすいです!ありがとう!