減価償却の自己金融効果について、図解と具体例を交えて解説をします。
自己金融効果とは?
減価償却の自己金融効果とは
減価償却をすると、実質的に外部から資金調達したのと同じ結果になる
ことを指します。
「自己」とは「自分で(つまり、借り入れや増資のように外部からではなく)」という意味で、「金融」とは「資金調達」を意味しているんじゃ
一言でいうと、減価償却費を計上すると資金が溜まるってこと?
そうじゃ
自己金融効果が簡単にわかる具体例
- 当社の保有する資産は建物(取得原価30円)のみである
- X0年度末の貸借対照表は以下のとおりである
- 減価償却費は毎期10円(耐用年数3年、残存価額ゼロ、定額法)
- 収益(建物の家賃収入)が毎期50円ある
- よって、毎期の利益は40(収益50−減価償却10)である
このような、建物だけのシンプルな具体例で考えていきます。
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では、さっそく3年後の貸借対照表をみてみましょう。
ここで注目してほしいのは、現金の増加額と利益の金額です。
利益が120に対して現金は150も増えています。
差額30の要因は減価償却費の30です。
なぜ、減価償却費の分だけズレるかというと、非現金支出費用だからです。
非現金支出費用とは、減価償却費のように、仕訳において借方では費用が計上される一方で、貸方では現金の減少が起きない費用をいいます。
非現金支出費用がある場合、利益と現金増加額に着目すると、
非現金支出費用の分だけ、利益と現金増加額にはズレが生じることがわかります。
式で表現すると以下のようになります。
利益 + 減価償却費 = 現金増加額
この式のとおり、利益を基準としたときに、減価償却費の分だけ現金が増えます。
これをもって減価償却費には自己金融効果があると言えるのです。
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よりわかりやすく!
なんとなくわかったようで、わからないのが自己金融効果です。
よりイメージしやすいように、具体例に条件を付け加えてみます。
配当を考えるとイメージしやすい
さっきの具体例に以下の条件を付け加えましょう。
当社は利益の全額を配当している。
この場合の3年経過後の貸借対照表と株主の手元現金はこうなります。
会社の現金に注目して下さい。
利益を全額配当したはずなのに、会社内に現金30が留保されています。
このB/Sを株主目線で考えてみると、
- 3年間で120利益を稼いでいて、その全額を配当金としてもらった
- でも、それに加えて、会社内に現金が30たまっている
- ということは、資金調達を30したのと同じだ!
となります。
これが自己金融効果のイメージです。
確かに、資金調達したように思えるわ
取替更新の資金が留保されている
さらに会社内に留保された30に注目すると、この30は建物の取得原価と一致していることがわかります。
会社は、耐用年数到来時に建物を買い換えるはずです。
買い換えるためには、資金が必要ですが、自己金融効果によりその資金が溜まっているため、買い換えが可能となります。
例え、利益を全額配当したとしても、取替更新の資金は会社に残るってことね
最後に(自己金融効果は魔法ではない)
以上が、自己金融効果の説明です。
ここまでの説明では、「減価償却費を計上するとお金が増えて自動的にたまる」と解釈できるので、魔法のようにも思えます。
しかし、実際はそんなことありません。
上記の具体例では建物30を保有しているB/Sから始めました。
これを建物取得前から考えてみると、建物購入時に
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
建物 | 30 | 現金 | 30 |
という仕訳を行っており、そもそも現金が30減少するところから始まることがわかります。
つまり、現金増加額は150ではなく、120(150−30)なのです。
よって、結局は、
減価償却費を考慮しても、利益の額と現金増加額は一致する
のです。
タイトルの、「減価償却費を計上するとお金が増える?」という問に対しては、
増えるように見えるが、実際に増えてるわけではない
が答えになります。
自己金融効果というのは、「減価償却費にはそういう一面もありますよ」という、あくまでも捉え方の1つとしてみるといいでしょう。
自己金融効果に対する理解が深まれば幸いです。
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