こんにちは!
今回は売価還元法の基本的な考え方について解説します!
売価還元法はなんの論点?
売価還元法は、商品の評価方法に関する論点です。
商品の評価方法には、先入先出法や平均法などありますが、そのうちの1つとして売価還元法があります。
どの方法を採用するかによって、期末商品の金額が変わるので、売価還元法は期末商品の算定方法と言えます。
決算整理仕訳で言えば、「しーくりくりし」の「くりし」の金額ってことだね
その通りじゃ
通常であれば、期末商品の金額は、商品有高帳を作成し、先入先出法などにより算定します。
しかし、中にはそれが困難な業種もあります。
代表例は小売業です。
小売業?
スーパーマーケットやホームセンターのような、取扱い商品数が多数ある会社をイメージしてみてください。
商品数が非常に多いので、商品別にそれぞれ商品有高帳を作成するのは大変です。
商品有高帳を用意できなければ(個別に管理が出来なければ)、期末在庫の金額を算定することはできません。
確かに商品数が無数にあると、期末在庫の金額は算定できないのか
数が多すぎて商品の個別管理がままならない場合に、「簡便的に期末在庫の金額を算定しよう」というのが売価還元法です。
売価還元法の概要
簡便的って、具体的にどう算定するの?
売価還元法は文字通り、売価をもとに原価を算定しようという方法になります。
具体的には、下記のように算定します。
期末在庫の売価 × 原価率 = 期末在庫の原価
普段と全然違う…
普段の常識を取っ払って理解することがポイントじゃ。
一応原価率について触れておきましょう。
原価率は売価に占める原価の割合です。
売価に原価率を乗じると、原価を求めることができます。
70円で購入した商品を100円で売る場合
→ 原価率70%
▼
売価100円と原価率70%がわかっていれば、原価が算定できる。
売価100円×70%=原価70円
原価率を使うのが売価還元法なのか。でも、1つ1つの商品について原価率を掛けるの面倒くさそうだね
その点は違うんじゃ
売価還元法は個別に商品を管理することをあきらめます。
よって、1つ1つについて別々に計算することはしないのです。
複数の商品を1つのグループとしたうえで、まとめて計算をします。
- 当社は100種類商品を扱っており、これらを1まとめにして売価還元法を適用している。
- 商品100種類の期末在庫の売価合計は20万円である。
- 原価率(商品100種類の平均)は、70%である。
▼
この場合、期末在庫の金額は20万円×70%=14万円
具体的な計算
概要がつかめたら、あとは実際の計算過程を確認してみましょう。
売価還元法においては、下記の2点がわかれば期末在庫が算定できます。
- 期末在庫の売価
- 原価率
よって、この2つを求めることになります。
- 期首商品:原価5万、売価7万
- 当期仕入高:65万(値入額28万)
- 当期売上高:80万
① 期末在庫の売価の算定
問題文には期末在庫の売価が書かれていないため、まずこれを算定することになります。
そこで、商品のボックスを売価ベースで作ってみます。
「期末商品の売価」以外の3つの売価が分かれば、貸借差額により期末在庫の売価を求めることができます。
期首商品の売価
簿記の問題では、これは問題文に書かれています。
(当期首商品=前期末商品なので、前期末の決算において、前期末在庫の売価が算定されている)
本問では、期首商品の売価=7万円
当期に仕入れた商品の売価
当期仕入高に値入額(ねいれがく)を加えることによって、算定できます。
「値入額」とは、仕入高に上乗せする利益のことをいいます。
今回は、仕入高65万、値入額28万なので、「65万で仕入れた商品を、28万上乗せして、売価93万円で販売する」という設定になっています。
本問では、当期に仕入れた商品の売価=93万円
当期に売った商品の売価
売った商品の売価は、当期の売上です。
どんなに商品数が多くても、売上の金額は普通に把握してるため、そのデータを用いることになります。
本問では、当期に売った商品の売価=80万円
これで、期末商品の売価以外の売価データが揃った!
はい。
あとは、貸借差額により期末在庫の売価データを算定します。
② 原価率の算定
続いては、原価率を求めましょう。
下記の勘定図を見てください。
商品ボックスの借方を、原価と売価に分けました。
そのうえで、それぞれの合計額を算定します。
- 原価合計:70万円
- 売価合計:100万円
売価のデータはさっき算定したから、それをそのまま使うんだね
ここから原価率を求めることができます。
原価率は、70万÷100万=70%
この70%が当期の平均的な原価率になります。
最初にも言ったとおり、複数の商品をまとめて計算しておる。なので、特定の商品の原価率ではなく、あくまでも、複数の商品を1つにまとめた場合の原価率という点は理解しておくんじゃぞ
解答(期末在庫の算定)
期末在庫の売価と原価率が求まりました。
あとは両者を掛けるだけです。
期末在庫の売価20万×70%=14万
この14万円が期末在庫の金額になります。
期末在庫の金額が求まれば、あとはいつも通りです。
すなわち、この14万円を用いていつも通り、しーくりくりしをやります。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
仕入 | 5万 | 繰越商品 | 5万 |
繰越商品 | 14万 | 仕入 | 14万 |
最後に
今回はここまでになります。
この記事では、基本的な考え方について解説しました。
しかし実際の売価還元法には、もっと細かい話がいくつかあります。
その点は、また別の記事にて解説をしようと思っておりますので、どうぞお待ちください!
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