ヤバい会計学は、 日商簿記検定受験生向けの会計学。
簿記の学習をするうえで、知っておくべき会計理論をかみ砕いてわかりやすく解説します。
ボブといっしょに勉強しましょう!

がんばろう!
今回学ぶこと
今回のテーマは資本取引・損益取引区分の原則です!

資本取引と損益取引?
会計の根幹の1つともいえる大事な考え方です。
しっかり理解しましょう!
資本取引・損益取引区分の原則って?
資本取引・損益取引区分の原則とは、「株主との取引で資本が増加しても、損益計算書には計上しちゃダメよ」という原則のこと

・・・
わかりやすく解説します。
▼
次の2つの取引、
- 増資(株主から現金の出資を受ける)
- 売上(商品を販売し現金を受け取る)
これを貸借対照表(BS)ベースで考えてみると、
どちらの取引においても、
「資産(現金)が増えた分だけ、BSの資本が増加する」
ことがわかります。

では、
- 増資額→100円
- 売上金額→200円
であった場合、それぞれ、利益はいくらになるでしょうか?

・・・
損益計算書(PL)を作って確認してみましょう。


増資は利益にならずに、売上代金の方は利益になるのか
そうなんです。
増資は利益にはカウントされません。
仕訳的にもそうですね。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
現金 | 100 | 資本金(P/L非計上) | 100 |
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
現金 | 200 | 売上(P/L計上) | 200 |

この違いはなんなの…?
ここで、今回のキーワードです!
ぜひ次の用語を覚えるようにしてください。
- 資本取引
-
株主との取引によって資本が増減する取引(PLには計上されない取引)
- 損益取引
-
資本取引以外(PLに計上される取引)
さっきの具体例でいえば、増資が資本取引で、売上が損益取引になります。
増資は資本取引なので、PLを経由することなく直接BSの資本を増加させるのです。

増資と売上の違いは、株主との取引かどうかっていうことだったんだ
増資以外では、利益の配当も資本取引に該当します。
なぜなら、配当金は株主に対して支払う取引だからです。
配当金は資本取引なので、利益剰余金を直接減額させるのです。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
利益剰余金(P/L非計上) | ×× | 現金 | ×× |

借方を費用にしないのは、資本取引だからなのか!
資本取引と損益取引を区別しないとヤバい
もし、資本取引と損益取引を区別しなければヤバいことがおきます。

ここからヤバい会計学の真骨頂だね
(期中)
株主:会社の運転資金が不足しているのですね。では、1億円出資いたします。ぜひ、これを元手に利益をしっかりと稼いで下さいね。
社長:任せて下さい!
▼
(時は流れ・・・)
▼
(決算手続き中)
社長:どれ、当期の利益はどんなもんじゃ?
部長:それが、、、あまり芳しくなく、ちょうど利益はプラスマイナス0となりそうです…
社長:なんと!それは困ったの。せっかく出資をしてもらったのに、利益がゼロだと株主に顔向けができんぞ。なんか利益に計上し忘れている取引はないのか?
部長:と言われましても…こちらが、いま作成中の損益計算書なのですが。
社長:どれどれ見せてみろ・・・む!むむ!見つけたぞ!
部長:早い!何がもれていましたか?
社長:株主から出資してもらった1億円が利益計上されておらん!
部長:え?どういうことですか?
社長:出資された分だけ、我が社の現金も資本も増えておる!つまりこれは、儲かったということじゃ!すなわち、これは利益じゃ!
部長:さすが社長です!早速1億円をPLに計上します!
社長:これで、株主にも自信もって報告できる!ついでに、さらに増資をお願いして、翌期も利益を稼いでいくぞ!

これはヤバい…
「資本取引と損益取引を区別しない」というのは、「資本取引をPLに計上する」ことを意味します。
ヤバい話からわかるとおり、資本取引をPLに計上すると利益の金額はめちゃくちゃになります。
そもそも利益とは、「株主からの出資額を元手にしていくら増やせたか?」という金額です。
にも関わらず、その元手を利益としてカウントすると、利益の意味をなさなくなってしまうのです。

株主からすると、自分が出資した額を「これが儲けです」って言われたら、呆気にとられちゃうね
▼
同じことが配当金にも言えます。
資本取引である配当金をPLに計上すると、やはり利益がおかしくなるのです。
利益は株主に帰属する金額ですが、
もし、株主への配当を費用としてPLに計上すると、配当を払う分だけ当期の利益が減ることになります。
つまり、配当金の額だけ、株主が損しているように見えてしまうのです。

配当金は株主の手もとに届いているので、株主は損していません。
よって、配当金の支払額もPL計上しないのです。

結局その理由は、「資本取引だから」の一言で済むんだね
その通りです。
最後にボブから一言

株主との取引を損益計算書に計上すると、利益が変になる!
資本取引・損益取引区分の原則とは、「株主との取引で資本が増加しても、損益計算書には計上しちゃダメよ」という原則のこと
コメント