取得価額、取得原価など、似たような用語。
「金融商品会計に関する実務指針」に定義が掲載されています。
しかし、文字だと分かりづらいので、具体例と図解を用いて解説します。
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念のため、最初に定義を掲載しておきます。
- 取得価額とは、金融資産の取得に当たって支払った対価の支払時の時価に手数料その他の付随費用を加算したものをいう。(以下、省略)
- 取得原価とは、一定時点における同一銘柄の金融資産の取得価額の合計額から、前回計算時点より当該一定時点までに売却した部分に一定の評価方法を適用して計算した売却原価を控除した価額をいう。
- 償却原価とは、金融資産又は金融負債を債権額又は債務額と異なる金額で計上した場合において、当該差額が主に金利の調整部分に該当するときに、これを弁済期又は償還期に至るまで毎期一定の方法で取得価額に加減した後の価額をいう。
- 帳簿価額とは、一定時点において帳簿上に記載している金融資産又は金融負債の価額(取得原価又は償却原価から評価性引当金を控除した後の金額)をいう。
- 貸借対照表価額とは、期末において貸借対照表に計上している金融資産又は金融負債の価額をいう。なお、貸借対照表上、貸倒引当金がある場合には、債権又は債券か ら当該残高を控除した後の金額が貸借対照表価額となる。
- 評価差額とは、期末において貸借対照表に計上した金融資産又は金融負債の時価とその帳簿価額(取得原価又は償却原価から評価性引当金を控除した後の金額)との差額をいう。
(金融商品会計に関する実務指針第57項)
では、具体例を見ていきましょう。
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まずは有価証券(株式)を例にしてみます。
具体例
当期の取引は以下の通りである。
- A社株式(株価@90円)を1株取得した。なお、付随費用10円を支払った。
- A社株式(株価@130円)を1株取得した。なお、付随費用10円を支払った。
- A社株式を1株売却した。売却原価は@120円である(平均法により算定)。
- A社株式は売買目的有価証券であり、期末時価は@150円である。
簡単にまとめると、次のようになります。
- 取得価額は、取得時に資産計上した金額
→①100円、②140円 - 取得原価は、「取得価額の合計額-売却原価」
→120円(=①100円+②140円-③120円) - 帳簿価額は、その時点の勘定残高
→120円(取得原価と同額) - 貸借対照表価額は、B/Sに計上した額
→④150円(時価) - 評価差額は、帳簿価額と貸借対照表価額の差額
→30円(=150円-120円)
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続いて、債権を例にしてみます。
具体例
当期の取引は以下の通りである。
- 当期に債権(貸付金)を700円で取得した。債権金額は1,000円であり、取得差額300円について償却原価法を適用する。
- 当期の償却額は100円である。
- 当期末における貸倒見積額は30円である。
簡単にまとめると、次のようになります。
- 取得価額は、取得時に資産計上した金額
→①700円 - 償却原価は、償却原価法を適用した金額
→800円(=①700円+②100円) - 帳簿価額は、その時点の勘定残高(ただし、貸倒引当金控除後の金額)
→770円(=800円-③30円) - 貸借対照表価額は、B/Sに計上した額(ただし、貸倒引当金控除後の金額)
→770円(帳簿価額と同額)
本記事は以上です。
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