- 翌期中に売却することを決めたその他有価証券(株式)は、流動資産に表示する?
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流動資産ではなく、固定資産に計上する。
解説
本問の論点は、翌期に売却予定のその他有価証券の表示区分です。
通常のその他有価証券は、ある程度長期間にわたって保有することを前提に固定資産に表示します。
では、翌期に売却することを決めた場合はどうなるのでしょう?
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翌期中に売却するのであれば、一年基準に従って流動資産になりそうです。
しかし、固定資産になります。
金融商品基準には以下の規定があります。
売買目的有価証券及び一年内に満期の到来する社債その他の債券は流動資産に属するものとし、それ以外の有価証券は投資その他の資産に属するものとする。
金融商品に関する会計基準 23項
すなわち、翌期中に満期が到来する社債を除き、その他有価証券は固定資産となるのです。
よって、翌期中に売却すると決めていたとしても、固定資産の区分に表示します。
なぜ流動資産にしないのか
その他有価証券は、その名前の通り、「その他」の有価証券です。
その中身は、資本提携目的、政策目的、長期の利殖目的など様々です。
本来、株式の保有目的は多種多様、様々あるはずですが、会計処理上は、それらを「その他有価証券」として一まとめにして、同じ会計処理してしまいます。
この理由は、「○○目的の場合は、△△」「□□目的の場合は、××」・・・と、細分化して会計処理のルールを定めることは現実的ではないからです。
身近なケースでいえば、ゴミの収集日。
「燃えるゴミの日」、「資源ゴミの日」とゴミの種類ごとに収集日が定められていますが、いずれにも該当しないゴミは、まとめて「その他のゴミ」となります。もし、細分化をするのであれば「陶器の日」「スプレー缶の日」「小型家電の日」・・・となりますが、そこまでの細分化は現実的には難しいため、「その他のゴミの日」とまとめられています。
その他のゴミが、個々のゴミの中身関係なく一律に収集日が決まっているように、その他有価証券も個別の銘柄ごとの事情は考慮せず、会計処理が定められているのです。
具体的には、
- その他有価証券だけど、比較的短期的に売却するかもしれない
- その他有価証券だけど、近々買い増しをして過半数取得するかもしれない
ということは気にせず、
「その他有価証券は、だいたい売買目的と子会社株式の中間的な位置づけだよね」
と捉え、だったら「原則、全部純資産直入で処理して、表示区分は固定資産にしよう」としています。
よって、来年売却することを決めたという個別の事情があったとしても、それは考慮することなく固定資産とするのです。
※本記事は、公認会計士試験の令和5年第Ⅱ回短答式試験(問題4)を題材にしました。
※例外的に流動資産となるその他有価証券には、「翌期中に満期が到来する社債等の債券」以外に「親会社株式で、翌期中に売却予定のもの」もあります。
本記事の参考となる規定
- 金融商品会計基準 23項 75項
- 財務諸表等規則 第15条四 第18条
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