全部純資産直入法って何?という方必見!図解と具体例を用いてわかりやすく解説

こんにちは!

  • その他有価証券評価差額金って何?
  • その他有価証券の会計処理がわからない
  • もう少し深く理解したい

という方向けに、その他有価証券の会計処理についてわかりやすく解説をします。

注意その他有価証券の税効果について

本記事では税効果については触れません。
税効果の処理を理解したい方は下記の記事をご覧下さい。図解を交えてわかりやすく解説しました。 その他有価証券の税効果を図解で直感的に理解する!

目次

その他有価証券の基本的な会計処理

原則として、その他有価証券の会計処理は全部純資産直入法により処理します。

全部純資産直入法とは、

  • 期末に時価評価する
  • 評価差額を純資産に直入する

このような会計処理をいいます。

 ▼

簡単な具体例で仕訳を確認してみましょう。

具体例
  • 当社はその他有価証券としてA社株式を100円で取得した。
  • A社株式の当期末時価は120円であった。

この場合、決算で以下の仕訳をします。

借方科目金額貸方科目金額
投資有価証券20その他有価証券評価差額金20
  • 簿記2級では「その他有価証券」勘定を用いますが、本記事では「投資有価証券」勘定で説明します

その結果、財務諸表は以下のようになります。

また、もし期末の時価が80円だった場合は以下のようになります。

借方科目金額貸方科目金額
その他有価証券評価差額金20投資有価証券20

 ▼

このように、値上がり・値下がりどちらにしても、

  • その他有価証券は時価評価される
  • 評価差額は純資産に直接計上されるため、P/Lの利益に影響を与えない

となります。

会計処理の論拠

続いて、時価評価する理由と評価差額を純資産に直入する理由を説明をします。

時価評価する理由

時価評価する理由はシンプルです。

その他有価証券は長期的には売却することを想定した有価証券だからです。

その他有価証券とは、名前のとおり、売買目的、満期保有目的、子会社/関連会社株式のいずれにも該当しない有価証券です。

位置づけ的には、売買目的有価証券と子会社/関連会社株式の中間に位置すると言われます。

いつかは売却する以上、時価評価をします。

おじさん(先生)

その他有価証券は、持ち合い株式や取引先企業への出資などが当てはまるんじゃ

ボブ(勉強中)

売却を想定しているものを取得原価で評価しちゃうのはおかしいから時価評価するんだね

評価差額金を純資産に直入する理由

純資産に直入する=P/Lに損益を計上しない、ということです。
P/Lに計上しない理由は、短期的な売却を想定していないからです。

仮にその他有価証券の値上がりを収益計上してしまうと、時価の変動で儲かったことになります。

しかし、長期保有を前提とするため、短期的な時価の変動で儲かったとするのはおかしいのです。

よって、P/L計上せずに直接純資産に計上をします。

参考

包括利益計算書

その他有価証券評価差額金は損益計算書に計上はされませんが、包括利益計算書には計上されます。

具体的には、その他有価証券評価差額の当期の変動額が「その他の包括利益」として計上されます。

その他有価証券評価差額金の意味

では、その他有価証券評価差額金にはどのような意味があるのでしょうか。

 ▼

その他有価証券評価差額金の計上額の意味は、

  • その他有価証券に含み益(または含み損)があるから、
  • 将来的に利益の増減要因になる可能性がある

ことを意味します。

その他有価証券評価差額金は、有価証券の「含み益(または含み損)」です。
よって、例え当期のP/Lに計上されていなくても、将来その有価証券を売却することでその金額は損益になります

そのため、その他有価証券評価差額金が多額に計上されている場合は、利益の変動に少し注意が必要となります。

参考

その他有価証券による益出し

その他有価証券を複数保有している場合、含み益となっている銘柄のみ売却し、含み損となっている有価証券を売却しないことで、利益の金額を(ある程度)操作することができます。

これを益出しといいます。

その他有価証券の減損処理

上記で益出しの話をしましたが、基本的に売却をするまでは時価評価差額はP/Lに計上されません

しかし、売却しなくても減損処理の対象となった場合には評価差額がP/Lに損失として計上されます。

減損処理とは、時価が著しく下がった場合の会計処理で、売却していなくても強制的に損失計上をしなくてはいけない処理のことをいいます。

最後に

本記事は以上です。

その他有価証券に対する理解が深まれば幸いです。

なお、本記事は全部純資産直入法を前提に解説をしました。

もう1つの処理である部分純資産直入法については触れていません。
部分純資産直入法はまた別の記事で解説をする予定です。

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 おまけ 

おじさん(先生)

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コメント

コメント一覧 (8件)

  • あまりに分かりやすくてびっくりしました!

    CPA受験生ではなく、経営企画部に属する者ですので、視点の違う質問で恐れ入ります。有報の税効果会計欄に「有価証券評価損」が毎年計上されているような企業は、投資戦略や経営が芳しくないと理解すればよろしいのでしょうか?

    • うーん、なんとも言えないですね。
      そもそも税効果部分の注記は、あくまでも税効果に関する注記なので、
      有価証券について詳しくみたい場合は、金融商品に関する注記を見るべきかなと思います。

  • 全部純資産直入法については、
    繰越利益剰余金つまり、配当原資は
    減らないと言う事でしょうか?

    • 全部純資産直入法では繰越利益剰余金は減少しませんが、

      配当原資(分配可能額)の計算に当たり、
      その他有価証券評価差額金の借方残高がある場合、
      その金額は分配可能額から控除することとなっております。

      よって、「分配可能額は減る」ことになります。
      (なお、その他有価証券評価差額金が貸方残高であっても、分配可能額は増えません)

      分配可能額の解説記事はいずれ作成しようかと思います!

  • テキストの解説では理解できなかった部分だったのでスッキリしました!わかりやすかったです。ありがとうございます!

    • コメントありがとうございます!
      お役に立ててよかったです!

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