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分離元企業の個別上の処理を理解する!(事業分離会計)

事業分離の分離元個別のアイキャッチ画像 企業結合会計・事業分離会計

事業分離の分離元企業の個別上の仕訳は、一見簡単そうに見えます。
でも実際には、色々なパターンがあって整理が難しい論点の1つですよね。

そこで今回は、分離元企業の個別上の会計処理について解説をします。

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今回の論点と注意点

論点の確認

事業分離を学ぶは「何の論点を勉強しているか?」を明確にすることが大事です。
この部分が曖昧だと大きな勘違いをしてしまうので気をつけましょう。

(実際に、事業分離の質問に来る半分くらいの方は論点がごっちゃになっています。)

分離元企業の処理(分離先ではない)

今回は分離「元」企業の会計処理です。分離「先」ではありません。

個別上の処理(連結ではない)

今回は「個別」の会計処理です。「連結」ではありません。

仕訳をする際の論点

事業分離は「事業を譲渡し」、「対価を受け取る」という取引のため、

  • 借方:受け取った対価
  • 貸方:分離した事業

というのが、仕訳の基本になります。

ここで、論点になるのが、

借方の対価をいくらで計上するか?

という点です。

具体的には、以下の2つのどちらにするか?です。

  • 時価
  • 帳簿価額(簿価)

また「時価と簿価のどちらにするか?」というのは、「差額(損益)を認識するか?」ということと表裏一体です。

  • 対価を時価→差額(損益)を認識する
  • 対価を簿価→差額(損益)を認識しない

会計処理の考え方

注意点と論点を確認したので、具体的な内容に入っていきましょう。

対価を時価にするか簿価にするかの判断基準

対価を時価にするかどうかは、その事業分離が以下のどの取引に該当するかによります。

先に結論を示しておきます。

取引 対価の額
共通支配下の取引 簿価
投資が継続 簿価
投資が清算 時価

用語の説明と考え方

  • 共通支配下の取引
  • 投資の継続
  • 投資の清算

この3つについて簡単に説明をします。

共通支配下の取引

企業結合に関する会計基準では以下のように定義されています。

「共通支配下の取引」とは、結合当事企業(又は事業)のすべてが、企業結合の前後で同一の株主により最終的に支配され、かつ、その支配が一時的ではない場合の企業結合をいう。(企業結合に関する会計基準 16項)

例えば、子会社に対する事業分離は共通支配下の取引に該当します。

共通支配下の取引の具体例

子会社に事業分離をした場合、事業分離をする前もした後も、一貫して分離元企業が「事業」と「分離先企業」を支配しています。

これを共通支配下の取引と言い、共通支配下の取引に該当する場合の対価の額は簿価になります。

なんで共通支配下の取引の場合には簿価なの?
ボブ、子会社に対する事業分離を企業集団単位で考えてみるんじゃ。
・・・企業集団の中を事業と対価が移動しているだけ…?
そのとおり企業集団単位でみれば何も起きてないと言えるんじゃ。であるならば、分離する前と後で金額が同じになるように会計処理をすべきなんじゃ。

投資の継続と清算

投資の継続と清算を簡単に言えば、その事業を売却したかどうかです。

  • 売却してない→継続
  • 売却→清算

事業分離会計では、受け取った対価でその判断を行います

具体的には、対価が「分離した事業と明らかに異なる資産」であるかどうかです。

事業と異なる資産を受け取った場合には、投資が清算になり、対価を時価で計上します。

そうでない場合には投資が継続になるので、対価を簿価で計上します。

受け取る対価は主に以下の4つがあります。

  • 現金等の財産
  • 分離先企業の株式(下記の3パターン)
    • その他有価証券
    • 子会社株式
    • 関連会社株式

これら受取対価と投資の継続・清算をまとめると以下のようになります。

対価の種類 継続or清算
現金等の財産 投資が清算
分離先企業株式
(その他有価証券)
分離先企業株式
(子会社株式)
投資が継続
分離先企業株式
(関連会社株式)

現金等の財産又はその他有価証券である場合には、事業とは明らかに異なる財産と考えられるため、投資は清算したと判定されます。

対して、子会社株式又は関連会社株式である場合には、その株式を通じて事業に影響を及ぼすことができるため、投資は継続していると判定されます。

注意対価が子会社株式の場合

対価が子会社株式の場合は、

  1. 分離先企業が、事業分離前から子会社であった場合
  2. 分離先企業が、事業分離をして新規で子会社となる場合

の2点がありますが、1は共通支配下の取引に該当します。
後述しますが共通支配下の取引に該当する場合には、投資の継続にはなりません。

判定の順番(フローチャート)

共通支配下の取引と投資の継続・判定は以下の順番に従って行います。

フローチャート(分離元企業の会計処理)

ステップ1共通支配下の取引か否か

分離先企業が元から子会社か?

□ Yes
共通支配下の取引なので「簿価」
□ No
→ステップ2へ

ステップ2投資は継続か清算か

受け取る対価は?

  1. 現金等の財産
  2. 分離先企業の株式(その他有価証券)
  3. 分離先企業の株式(子会社株式)
  4. 分離先企業の株式(関連会社株式)
□ 「1」または「2」
投資は清算なので「時価」
□ 「3」または「4」
投資は継続なので「簿価」
まずは共通支配下の取引かどうかを考えて、もし違った場合に、継続か清算かを考えるんだね
そうじゃ。共通支配下の取引だった場合は、継続か清算かの判定は不要なんじゃ

具体的な会計処理

共通支配下の取引(分離先企業が子会社)の場合

共通支配下&対価が現金等の財産

具体例

  • 当社は簿価100の事業Xを子会社であるA社に分離した。
  • 受け取った対価は、現金等の財産(時価は150、A社における帳簿価額は120)である。
借  方 金額 貸  方 金額
現金等の財産 120 事業X 100
差額(損益) 20

共通支配下の取引であるため、受け取った対価の額はA社における帳簿価額で計上します。

共通支配下の取引は、事業分離前後で金額は変化させないように会計処理をします。

そのため、ここでの帳簿価額は「A社における帳簿価額」である点に注意しましょう。

あれ、そうすると帳簿価額で計上しているのに差額が生じるの?
共通支配下の取引は企業集団内を事業が移転してるに過ぎないため、本来は差額である損益は認識したくないんじゃ。しかし、仕訳の構造的に差額が生じるのは避けられないんじゃ
積極的に損益を認識しているわけじゃないんだね!
ちなみに、この損益は連結上で消去するから、連結上は損益はゼロになるんじゃ

共通支配下&対価が株式

具体例

  • 当社は簿価100の事業Xを子会社であるA社に分離した。
  • 受け取った対価は、A社株式(時価は150)である。
借  方 金額 貸  方 金額
A社株式 100 事業X 100

共通支配下の取引であるため、受け取った対価の額は帳簿価額で計上します。

その結果、損益は生じません。

共通支配下ではない場合

not共通支配下&対価が現金等の財産

具体例

  • 当社は簿価100の事業Xを資本関係のないA社に分離した。
  • 受け取った対価は、現金等の財産(時価は150、A社における帳簿価額は120)である。
借  方 金額 貸  方 金額
現金等の財産 150 事業X 100
差額(損益) 50

共通支配下の取引でないため、投資の継続か清算かを考えます。

今回は受取対価は現金等の財産であるため、投資は清算されたと判断します。

よって、対価は時価の150で計上し、損益を認識します。

not共通支配下&対価が分離先企業株式(その他有価証券)

具体例

  • 当社は簿価100の事業Xを資本関係のないA社に分離した。
  • 受け取った対価は、A社株式(時価は150)である。
  • A社に対する持分比率は20%未満なので、A社株式はその他有価証券として保有する。
借  方 金額 貸  方 金額
A社株式 150 事業X 100
差額(損益) 50

共通支配下の取引でないため、投資の継続か清算かを考えます。

今回は受取対価はその他有価証券であるため、投資は清算されたと判断します。

よって、対価は時価の150で計上し、損益を認識します。

not共通支配下&対価が分離先企業株式(子会社株式)

具体例

  • 当社は簿価100の事業Xを資本関係のないA社に分離した。
  • 受け取った対価は、A社株式(時価は150)である。
  • A社に対する持分比率は50%超なので、A社株式は子会社株式として保有する。
借  方 金額 貸  方 金額
A社株式 100 事業X 100

共通支配下の取引でないため、投資の継続か清算かを考えます。

今回は受取対価は子会社株式であるため、投資は継続していると判断します。

よって、対価は簿価の100で計上し、損益は認識しません。

not共通支配下&対価が分離先企業株式(子会社株式)

具体例

  • 当社は簿価100の事業Xを資本関係のないA社に分離した。
  • 受け取った対価は、A社株式(時価は150)である。
  • A社に対する持分比率は20%以上なので、A社株式は関連会社株式として保有する。
借  方 金額 貸  方 金額
A社株式 100 事業X 100

共通支配下の取引でないため、投資の継続か清算かを考えます。

今回は受取対価は関連会社株式であるため、投資は継続していると判断します。

よって、対価は簿価の100で計上し、損益は認識しません。

1つ前の、対価が子会社株式の場合と同じだね

最後に

今回はこれで以上です。

事業分離は、考え方を整理できていないといつまでたっても間違えやすい論点です。

本記事で分離元企業の会計処理の考え方を理解してもらえれば幸いです。

最後に、フローチャートを再度掲載しておきますので、確認をしておきましょう!

フローチャート(分離元企業の会計処理)

ステップ1共通支配下の取引か否か

分離先企業が元から子会社か?

□ Yes
共通支配下の取引なので「簿価」
□ No
→ステップ2へ

ステップ2投資は継続か清算か

受け取る対価は?

  1. 現金等の財産
  2. 分離先企業の株式(その他有価証券)
  3. 分離先企業の株式(子会社株式)
  4. 分離先企業の株式(関連会社株式)
□ 「1」または「2」
投資は清算なので「時価」
□ 「3」または「4」
投資は継続なので「簿価」
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会計ノーツ 編集長
nobo

会計ノーツ編集長のnoboです。普段はCPA会計学院で公認会計士講座の講師をしながら、会計の教え方を日々研究しています。
公認会計士試験、日商簿記1級に合格済みです。

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