こんにちは!
今回は、税効果会計の主要な勘定科目の1つ、
「繰延税金負債」についてわかりやすく解説します!
繰延税金負債はDTL(でぃーてぃーえる)と略すことが一般的です。
※Deferred Tax Liabilityの頭文字
繰延税金負債を一言でいうと!
- 繰延税金負債ってなに?
-
「課税が後回しになっている場合の、その支払い見積額」を示す負債のこと
では、解説していきます。
繰延税金負債は税効果会計により計上される負債
会社が儲けた金額には、法人税等という税金がかかります。
税率はだいたい30%くらいです(本記事では30%を前提に説明します)。
利益が100なら、税金は30かかるということだね
しかし、益が生じているのに課税が後回しになるケースがあります。
その場合において、税効果会計に基づき計上されるのが繰延税金負債なのです。
・・・
繰延税金負債が生じる主なケース
繰延税金負債が生じるケースは限られています。
今回は主なものとして、2ケース紹介します。
\繰延税金負債が計上されるケース/
- 含み益のある資産の時価評価
- 圧縮記帳
では、それぞれ確認していきましょう。
ケース①含み益のある資産を時価評価した場合
その他有価証券の時価評価
具体例
- A社株式(その他有価証券)を400で取得し、当期末においてまだ売却せず保有している。
- 当期末におけるA社株式の時価は、100増加し500となった。
この場合、下記の時価評価の仕訳を行います。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
A社株式 | 100 | 繰延税金負債 | 30 |
評価差額金 | 70 |
- 繰延税金負債:評価益100×税率30%=30
あ、繰延税金負債がでてきた!
繰延税金負債が生じるロジック
- 会計上、含み益100を認識した。
- でも、単に時価評価しただけで、儲けたわけではない。
- だから、まだ課税されない。
- でも、将来売却したら課税され、税金30の支払義務が生じる。
- じゃあ、その情報を貸借対照表に表示しよう…
▼
繰延税金負債30を計上!
解説
その他有価証券を時価評価し、含み益100を認識したとしても、まだ売却していないため、
当期の利益にはしません(純資産に直入する)。
そのため、時価評価した時点では当然に課税されません。
しかし、含み益があるということは、まだ課税されていないだけで、将来課税される可能性があるということです。
そこで、将来課税された場合の税金支払額を貸借対照表で示すために、繰延税金負債を計上するのです。
「BSに含み益を計上するなら、それに対する課税額もBSに計上しなきゃいけない」ってことだね
連結上の評価差額
これと同じことが連結上の評価差額でも生じます。
連結財務諸表上、支配獲得時に子会社の資産・負債を時価評価します。
これも、その他有価証券と同じく、含み益を認識する処理といえます。
そのため、仮に子会社の土地に100の時価評価益が生じているなら、繰延税金負債を30計上することになるのです。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
土地 | 100 | 繰延税金負債 | 30 |
評価差額 | 70 |
続いて、繰延税金負債が計上される、もう1つのケースを確認します
ケース②圧縮記帳による課税の繰り延べ
補助金・保険金は課税が延期される
基本的に、当期の利益は、当期に課税されます。
しかし、
- 国庫補助金受贈益(補助金を受け取った場合の収益)
- 保険差益(保険金を受け取った場合の収益)
これらの収益は例外です。
当期にすぐに課税されず、課税は将来に延期されるのです。
この会計処理を圧縮記帳といいます。
・・・なんですぐに課税されないの?
理由は、補助金や保険金の効果を失わせないためです。
- 補助金
-
会社が公共性の高い資産(例:水道施設、医療施設、児童福祉施設など)を取得する際に、その代金を補助する目的で会社に交付されるもの。
- 保険金
-
火災で資産が焼失した場合に、代わりの資産を取得するために支払われるもの。
▼
このように、補助金も保険金も、資産の取得代金として使用するために支払われるものなのです。
仮に、すぐに課税されると、資産の取得ができなくなる可能性があります。
補助金の効果が失われるってのはこのことか
よって、すぐには課税されず、将来に課税されることになるのです。
そして、この場合繰延税金負債が計上されます。
課税の延期→繰延税金負債の計上
繰延税金負債が生じるロジック
- 会計上、国庫補助金受贈益100を計上した。
- でも、補助金の効果を発揮させるためにすぐに課税すべきではない。
- だから、まだ課税されない。
- でも、将来課税されることで、税金30の支払義務が生じる。
- じゃあ、その情報を貸借対照表に表示しよう…
▼
繰延税金負債30を計上!
ポイントは、課税の免除ではなく、課税の延期という点です。
つまり、まだ課税されていないだけで、将来課税されるのです。
そこで、将来課税された場合の税金支払額を貸借対照表で示すために、繰延税金負債を計上するのです。
将来加算一時差異
より理解するために、申告調整のイメージもつけておきましょう。
申告調整とは?という方は、こちらの記事(繰延税金資産)を参照してください
- 補助金を受け取った時点では、課税させないために減算調整
- その後(将来)、課税するために加算調整
このように、課税が延期される場合、将来加算調整をするので「将来加算一時差異」といいます。
繰延税金負債は、この将来加算一時差異に対応する額を負債計上したものなのです。
圧縮記帳の会計処理には、直接減額方式と積立金方式があります。
このうち、繰延税金負債が計上されるのは積立金方式によった場合です。
最後に
本記事は以上です。
税効果会計は非常に難しく、繰延税金負債も理解がしづらいものとなっています。
本記事で理解が深まれば幸いです。
また、繰延税金資産と合わせておさえるようにしましょう。
コメント
コメント一覧 (2件)
色んなサイトで繰延税金について解説されていますが、このサイトがもっともスッキリ理解できました。
ワンダフル。
ワンダフルいただきました笑
ありがとうございます、励みになります!