- 工事契約の会計基準は、収益認識の会計基準の適用によりどうなりますか?
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工事契約の会計基準は廃止されます。ただし、会計処理自体は従来のものから大きく変わるわけではありません。
解説
収益認識基準には以下の規定があります。
第81項の適用により、次の企業会計基準、企業会計基準適用指針及び実務対応報告は廃止する。
(1) 企業会計基準第 15 号「工事契約に関する会計基準」
(2) 企業会計基準適用指針第 18 号「工事契約に関する会計基準の適用指針」
収益認識基準90項
つまり、収益認識基準の適用により、工事契約基準は廃止になります。
よって、工事は収益認識基準に従って処理することとなります。
工事契約基準には、工事完成基準と工事進行基準があったけど、収益認識基準ではどうなるの?
ボブの指摘のとおり、従来の工事契約基準では、
工事の進捗部分についての成果の確実性が、、、
- 認められる→工事進行基準
- 認められない→工事完成基準
となっていました。
成果の確実性が認められる場合とは、「工事収益、工事原価、工事進捗度の全部を見積もれる場合」です。
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対して、収益認識基準は財又はサービスに対する支配が顧客に移転した時点で収益を認識します。
この考え方は工事に限ったものではなく、収益認識基準の根本的な考え方じゃ
この支配が移転するタイミングには、下記の2つがあります。
- 一定時点で移転する
- 一定期間にわたって移転する
もし、その工事が①ならば一定時点で収益を認識し、②ならば一定期間にわたって収益を認識します。
①なら工事完成基準のような感じで、②なら工事進行基準のような感じってことじゃ
工事契約基準が廃止になったと言えど、会計処理が変わったわけじゃないんだね。ちなみに、一定時点か一定期間かは、どうやって判断するの?
収益認識基準38項では、次の1〜3のいずれかの要件を満たすならば、「一定期間」に該当するとしています。
- 企業が顧客との契約における義務を履行するにつれて、顧客が便益を享受すること
- 企業が顧客との契約における義務を履行することにより、資産が生じる又は資産の価値が増加し、当該資産が生じる又は当該資産の価値が増加するにつれて、顧客が当該資産を支配すること
- 次の要件のいずれも満たすこと
- 企業が顧客との契約における義務を履行することにより、別の用途に転用することができない資産が生じること
- 企業が顧客との契約における義務の履行を完了した部分について、対価を収受する強制力のある権利を有していること
例えば、顧客の土地の上に建物の建設を行う工事契約の場合、2の要件を満たすものと考えられます。
逆に言えば、「②の要件を満たすけど、工事進捗度を見積もれないから、工事完成基準を適用する」という選択はできなくなります。
(進捗度を見積もれない場合、原価回収基準を適用します)
収益認識基準には、工事損失引当金の会計処理もあります。
そのため、この点においても従来の処理から大きな変更はないものとなっています。
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