未実現利益を消去する際の勘定科目!連結は売上原価で、持分法が売上の理由とは?

商品の未実現利益の消去について、

  • 連結の未実現利益の消去で「売上原価」を使う理由は?
  • 連結は「売上原価」なのに、なんで持分法では「売上」を使うの?
  • 覚えていいって言われたけど、よく間違えるから理由をちゃんと知りたい

という方向けに、未実現利益を消去する際の勘定科目について解説をします。

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目次

論点の確認

まず、簡単に今回の論点を確認しましょう。

なお今回は、終始、ダウンストリームを前提にして説明します。

 ▼

商品の未実現利益を消去する仕訳について、連結と持分法の両方を見比べてみます。

連結子会社の場合の修正仕訳

借方科目金額貸方科目金額
売上原価××商品××

持分法の場合の修正仕訳

借方科目金額貸方科目金額
売上××A社株式××

借方の勘定科目に注目すると、連結は「売上原価」で持分法は「売上」を使っていることがわかります。

なぜ、両者で異なるのか?この点を考えていきましょう!

参考

貸方も連結は「商品」、持分法は「A社株式」と、両者で異なっていますが、本記事の論点ではないため触れません。
持分法の貸方については以下の記事で解説をしているのでそちらを参考にして下さい。
持分法の未実現利益を理解する!仕訳の考え方をマスターしよう

連結会計で売上原価を調整する理由

まずは連結からいきます。

具体例
  • P社はS社を連結子会社としている。
  • P社は100で仕入れた商品を、S社へ150で販売した。
  • S社は上記商品を在庫として保有している。

連結P/Lにおける期末商品の金額は外部仕入価格の100になるべきです。

しかし、S社の個別P/Lでは150になっており、P社が付加した利益50だけ過大計上になります。

そこで、期末商品150から内部利益50を控除して100にするために連結修正仕訳をいれます。

具体的には、P/Lの期末商品を50減らすために連結修正仕訳の借方を売上原価にするのです。

ボブ(勉強中)

未実現利益50の分だけ期末商品の金額が過大になってて、それを消さないといけないってのはわかる…けど…

おじさん(先生)

ん、どうしたんじゃ?

ボブ(勉強中)

なんでそのための仕訳が売上原価になるのかなって。売上原価を借方に置くってのは、売上原価を増やしてるってことだけど…なんで、「期末商品を減らす=売上原価を増やす」になるの?

おじさん(先生)

それは簡単なことじゃ

売上原価は以下の式で算定されます。

期首商品+当期仕入ー期末商品=売上原価

これを前提にすると、「期末在庫が減る=売上原価が増える」ことが一目瞭然です。

ボブ(勉強中)

確かに…期末商品が減れば売上原価は増える…ッ!

ここで先ほどの説明を思い出しましょう。
「期末の未実現利益の消去=期末商品を減らす」でした。

よって、期末の未実現利益の消去=期末商品を減らす=売上原価を増やす=借方は売上原価となるのです。

 ▼

まとめると、以下のようになります。

連結子会社の場合には、過大になっている期末商品を減らすために、「売上原価」を使って仕訳する

連結で売上原価を使うのは、P/Lの期末商品を修正するため!

持分法で売上を調整する理由

続いて、持分法です。

そもそも持分法と連結の大きな違いはなんでしょうか?

ボブ(勉強中)

…?

それは、持分法は財務諸表を合算しないという点です。

ボブ(勉強中)

そっか、持分法は1行連結だった

ここで、さっき学習した「連結で売上原価を修正する理由」を思い出してみましょう。

連結で売上原価を修正するのは、過大になっている子会社P/Lの期末商品を修正するためでした。

ここでのポイントは、修正している期末商品は親会社のものではなく「子会社側のもの」という点です。

ボブ(勉強中)

確かに、子会社が在庫を持ってるから、修正している期末在庫は子会社の金額だ

だとすると、この売上原価を修正する仕訳には1つ前提があることがわかります。

それは、

相手の財務諸表を合算している

という前提です。

  • 子会社側の期末商品が過大計上されている
  • それを合算すると、連結P/Lの期末商品が過大な金額になってしまう。
  • だから、それが連結P/Lに計上されないように「売上原価」で修正をする。

連結では、この理屈で売上原価を修正するのです。

 ▼

対して、持分法ではこの理屈は成り立ちません。

なぜなら、財務諸表を合算しない以上、期末商品の過大計上は起きないからです。

じゃあ、持分法の場合、何が過大計上されているかというとP社側の「売上」です。

連結の場合、子会社に対する売上は相殺するため「売上」の過大計上は起きません。

しかし、持分法の場合は相殺仕訳をしないため、「売上」が過大計上になっているのです。

よって、「持分法では売上を修正する」となるのです。

財務諸表を合算しない持分法では、期末在庫が過大計上にならないので「売上原価」の修正はせず、その代わり「売上」を修正する

最後に

本記事は以上です。

最初勉強したときは、なんで連結と持分法で勘定科目が違うんだ…と頭を抱えた方もいらっしゃると思います。

本記事で少しでも理解が深まれば幸いです。

 おまけ 

おじさん(先生)

この記事はためになったかの?

ボブ(勉強中)

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おじさん(先生)

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コメント

コメント一覧 (11件)

  • 連結(ダウンストリーム)の未実現利益の消去で「売上原価」を使う理由について
    CPAの教科書では「費用を増やすことで利益を減少させる」と解説されていましたが、連結精算表で考えてみても理解できませんでした…
    【売原】(P社)100(S社)150【売高】(P社)150(S社)0
    (理解不能)両建150消去するのに売原50加算?
    でも、当サイトの売上原価の内訳による解説でようやく消化できました!

  • アップストリームについて

    アップストリームの場合は、親会社の期末商品に含まれる未実現利益を消去するために、
    売上原価/商品の仕訳を切ると思いますが、この売上原価は、親会社の売上原価の増加+子会社の利益の減少という二つの意味を持っているのでしょうか?
    親会社の売上原価を増やしているのに、それが子会社の利益の減少になっていて非支配株主へ子会社の利益の減少のインパクトを配分するというのがしっくりきません。どういうことでしょうか?

  • とても分かりやすかってです!
    もし機会があるようでしたら、持分法の際の修正の際、相手科目が株式となる点について、解説頂けると有り難いです。

    • そもそも持分法とは?という話でしょうか。
      この点は、いずれ記事にしますね。

  • 合算しないという点で期末商品を修正しないのであれば、売上も過大計上だけど修正する必要ないって事になりませんか?教えて下さい。お願いします。

    • 相殺仕訳というのは合算があってやるものと認識しております。そこがまず違うのでしょうか?

      • 合算しないので、A社の商品は連結B/Sに計上されない
         ↓だから
        商品の修正は行わない
         ↓一方で
        P社が計上した売上は、連結P/Lに計上されている
         ↓だから
        その売上は修正する

        このような理解になります!

  • 丁度持分法の勉強をしていて、使用する勘定科目の違いに首を傾げてました。
    非常に分かりやすい説明に感謝です。

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