一部売却・資本剰余金からの法人税相当額の控除について

連結の一部売却における法人税等相当額の控除について、質問がきました。

そこで今回は具体例を用いて解説します。

以下のようなケースを考えます。

具体例
  • P社は、×1年度首にS社を設立し子会社化した。出資額は1,000、持分比率は100%である。
  • S社は、×1年度に純利益を500計上した。
  • P社は、×1年度末にS社株式20%を売却することを決定し、×2年度首に350で売却した。
  • 法人税等の税率は30%である。

上記をもとに、×2年度首に行われた一部売却の会計処理を示してみます。

個別上の仕訳

借方科目金額貸方科目金額
現金預金350S社株式200
S株売却益150
法人税等45未払法人税45
個別上では、売却益150と法人税等45が計上される

続いて、連結修正仕訳を考えます。
連結では、上記のS株売却益を消去します。

連結修正仕訳

借方科目金額貸方科目金額
S社株式200非支配株主持分300
S株売却益150資本剰余金50
売却益は全て消去され、資本剰余金50が計上される

 ▼

ここで今回考えたいのは、法人税等に関する修正です。

連結上で売却益を消去しました。
そのため、売却益から生じた法人税等についても修正が必要になるのです。

仕訳の形は次のようになります。

借方科目金額貸方科目金額
資本剰余金×××法人税等×××

貸方で法人税等を消去しつつ、借方では資本剰余金から控除します。
資本剰余金は「連結上の売却益」を意味してますが、課税される以上、売却による資本の増加額は税引後になるべきです。
よって、資本剰余金を税引後にするために、資本剰余金から控除するのです。

ここまでで仕訳の形はわかりました。
では、最後に金額を考えましょう。

法人税等の修正額はいくらになるでしょうか?

 ▼

売却益150を全て消去したので、そこから生じた法人税等も全額45消去したくなります。

しかし、これは誤りです。

借方科目金額貸方科目金額
資本剰余金45法人税等45
45を消去するのは誤り

正しくは、資本剰余金に振り替えた50の30%である、「15」についてのみ修正をします。

借方科目金額貸方科目金額
資本剰余金15法人税等15
これが正しい仕訳

このように仕訳することで、資本剰余金の増加額は税引後の金額である35(=50-15)にできるのです。

 ▼

ただ、これは逆に言えば売却益を45消去しているにも関わらず、法人税等は15しか消去していないことを意味します。

実際に連結P/Lを作成すると次のようになります。

この点は、直感的には理解しづらい部分です。

これを理解するためには、投資に係る一時差異に対する税効果を考慮しなくてはいけません。

では、投資に係る一時差異を考慮して考えてみましょう。

X1年度末に売却の意思決定をしているため、X1年度末に以下の連結修正仕訳が行われます。

×1年度(投資に係る一時差異の発生)

借方科目金額貸方科目金額
法人税等調整額30繰延税金負債30
取得後剰余金500×売却割合20%×税率30%=30

そして、一部売却を行ったX2年度に以下の連結修正仕訳が行われます。

×2年度(投資に係る一時差異の解消)

借方科目金額貸方科目金額
繰延税金負債30法人税等調整額30
上記仕訳の逆仕訳

上記の仕訳を加味すると、×2年度の連結P/Lは次のようになります。

このように、一部売却前に投資に係る一時差異に対して税効果をかけていれば、損益計算書は上手く合うようになっているのです。

 ▼

本記事は以上です。

最後にまとめておきます。

法人税等の修正額は、「資本剰余金を税引後の額にするために、資本剰余金×税率で算定する!」とおさえましょう。

そのうえで、「法人税等が全額消去されないのに…」という点は、「投資に係る一時差異に税効果をかけていれば辻褄が合う!」と理解しましょう。
(逆に言えば、税効果をかけていなければ、法人税だけが残ってしまうことになります)

 おまけ 

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