昨日実施された第167回 日商簿記検定1級の感想を書いておきます。
解説動画もアップしているので、ぜひこちらもご確認ください
全体として
まずは一言。
今回は難しかった!
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受験された皆様お疲れ様でした。
最近の試験傾向は、
- 商簿・会計学は難しい
- 工原は簡単
- 重要性の高い論点からの出題が多い
という感じでしたが、今回は、
- 商簿は標準的(ただ、簡単ではない)
- 会計学、工簿、原計は難しい
- マイナー論点からもがっつり出題
となり、傾向が変わった印象です。
「商簿は標準的」と書きましたが、そもそも科目の特徴として、試験範囲が広いので勉強が大変で、問題の分量が多いから素早く情報を整理する必要があり、そのうえで集計ミスをしない集中力も必須と、商簿は簡単になりようがない科目です。
この結果、全科目難しかったと言っても過言ではありません。
受験された方は本当にお疲れ様でした(*ᴗˬᴗ)⁾⁾_🍺
前回の合格率は約20%とかなり高かったですが、今回は逆に結構低くなりそうな気がします(配点調整して10%にはしてほしいな。。。)
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以下、各科目ごとのコメント書いておきます。
商業簿記
問題用紙2ページにわたって、文字がびっしり埋まっているのはいつも通り。
(わかっていても、びびりますね)
ただ、中身はいつもよりかなり解きやすい。
「これ何をすればいいんだろう?」という問題文はほぼありませんでした。
とは言っても、出題論点は、
- 収益認識
- 売価還元法
- 固定資産の減損
- その他有価証券(OCI含む)
- ソフトウェア
- 退職給付
- ストック・オプション
- 自己株式
と、多岐にわたっており、決して簡単とは言い切れない。
また連結会計も合わせて出題されました。
内容は簡単な資本連結(取得関連費用)と成果連結(商品のダウンストリーム)のみでした。
よかったと一安心したいところですが、そう簡単にはいかないのが簿記1級。
配点箇所になっている売上、売上原価、棚卸資産、土地の4箇所は連結的には簡単です。しかし、いずれも個別上の決算で金額が変動しています。つまり、いくら連結上の処理ができたとしても、個別で間違えていると正解不可能な問題でした。そのため、正解するのは意外と難しい(せめて、ここくらいは簡単に正解させてほしかった泣)。
とは言っても、実力があれば正解できた箇所といえます。他の科目まで見渡したときに、ここでの失点はかなり痛いです。合格するには、この部分も点数を取りたい問題でした。
会計学
分配可能額、1株当たり情報、事業分離が出題されました。
いずれも1級的には細かい論点なので、切っていた方には非常にきつい回でした。
ただ、難易度自体は決して高くありません。特に事業分離は2つも出てきて焦りますが、中身はシンプルでした。例題レベルを解けるくらいの最低限の対策していれば、高得点も十分可能だったと思います。
(5月短答受験でガッツリ勉強していた会計士受験生には有利な問題だったかも)
「対策していれば簡単だけど、対策してない人が多そう」ということで、「今回の会計学は難易度高め」としておきます。
ちなみに、CPAラーニングの簿記1級講義では、いずれも詳しく講義しているので、対策甘かった…という方は受講してみてください(無料です)
工業簿記
「なんじゃこりゃ…」
と全ての方が思ったであろう問題。
このような場合、まずは飛ばして、原価計算から解くのがいいでしょう。
そのうえで、残った時間で色々と試行錯誤しながら粘り強く解くことができれば、だんだんと数字がわかってくる問題でした。
如何に思考停止にならないかが重要な、工業簿記+精神力が試される問題でした。
とは言っても、初見でこの情報量をしっかり整理するのは非常に大変なので、平均点はかなり低そうな予感がします(配点調整がなければ)。ましてや、本番の緊張感の中でこの問題はきつい。
正直、今回の工簿は交通事故と捉えるのがいいと思います。今回手も足も出なかったとしても、変な回に当たって不運だったと悩まないことが大事です(このような問題は、悩んだところで、対策のしようがないですから。。。)。
原価計算
こちらは打って変わって、1回は解いたことある雰囲気の問題。
「これは解けそうだ!」
と、いざ取り掛かってみると意外と難しい。
(「工簿が難しそうだから原価計算早めに解かなきゃ」という焦りが、追い打ちをかける)
予算実績差異分析は販売数量を推定する必要があり、また、市場占拠率差異の算定も必要でした。
応用力と細かい知識の両方とも必要で、良い問題ではありますが、受験生的にはきついですね。
第2問の最適セールス・ミックスは、まさかのリニアプログラミング(LP)。
しかもLPやってないと全滅する問題でした(さらに問3はそもそも難しい)。
せめて、「問1はLP不要、問2だけLP必要」としてくれれば、よかったのに。
前回までの工原は、「部分点を拾わせてあげよう」という気持ちがプンプン伝わってきましたが、今回はそんな配慮は一切ない問題でした。
どちらが試験として望ましいのかは一概に言えないですが、元来、工原はそのような性質を備えた科目です。
なるべく穴のないように対策をしておきたいところです。
最後に
簿記1級は簡単な試験ではないなと痛感する回でした。
もし「合格点を超えられそう」という方は、素晴らしいです👏ぜひ自信をもってください。
そうでない方は、課題をあぶり出し、今回よりも実力をアップしたうえで11月に臨めるように頑張ってください。
難しい回ではありましたが、決して70点超えが不可能な問題ではありません。
改めて問題を見れば、「もっと正解できたな」と実感できるはずです。
次は絶対に合格するぞという気概をもったうえで、基礎を徹底的に、網羅的に勉強する、という基本に忠実な勉強をし、そして、工簿のような事故に遭っても思考停止にならない精神力・心の準備もしっかりしておきましょう。
コメント
コメント一覧 (9件)
コメント失礼致します。今回傾斜配点が入るとすればどの科目でしょうか?
会計学の足切りが非常に怖いです。事業分離の個別はおそらく完答、語句問題は4つあってると思います。その他は間違ってました😭
調整入るなら、工業簿記の気がしてます。
会計学のその出来なら、足きりはないと思いますよ!
怖すぎて死にそうです😭
コメント失礼致します。
傾斜配点で下方修正の有無について質問させていただければと思います。
各予備校の回答速報で自己採点しましたが、間違っている箇所は正答率の高い箇所が多いでした(商業簿記の減価償却費と連結全般、会計学ののれん等調整額、原価計算の固定費差異など)。傾斜配点で下方修正されて不合格にされてしまわないかと心配しています。
自己採点の結果↓
予備校、商業簿記、会計学、工業簿記、原価計算、合計
TAC 、17、17、23、24、81
クレアール 、17、17、25、24、83
CPAランニング、17、17、20、23、77
ネットスクール、17、19、25、23、84
なんとも言えないですが、自己採点80点超えの方が落ちた例は耳にしたことがないので、大丈夫だと思います!
80点前後ということは正解箇所がかなり多いはずなので、むしろ傾斜配点で点数あがる可能性もある気がします。
今回の日商簿記1級を受験しました。
各予備校で自己採点をして平均を取りますと
商15/会20/工15/原15
で65点でした。
傾斜配点がかかってどのくらいの%で合格すると思われますか?
五分五分だと思います!
コメント失礼します。今回簿記1級を受けました。会計学以外は20点以上は確実に取れてるのですが会計学だけ解答が9ヶ所しかあってません(保証債務を除く単語4つ、第3問の問1の1.2.3.5、問2の2)。各予備校の自己採点では全て10点は確実に取れてるのですが、傾斜配点で足切りなるかでとても不安です…
傾斜配点がある場合、単語に傾斜配点が行われることはあるのでしょうか?
単語に配点が多めに振られるのはあると思います(配点は公表されていないのであくまで推測ですが)。
まあでも、各採点で10点取れているのであれば、きっと大丈夫だと思いますよ。